特 徴 分析例帳票例 台帳管理システム要求
◆ 特 徴

このプログラムでは、スペクトル分析エンジン(コード FUKUSHIMA)と、労働省食品放射能スクリーニング基準に対応した2つの分析エンジンを搭載しています。
スペクトル分析エンジンでは、多重ピーク探査最尤関数適合スーパーフィッティングを搭載し、従来の分析エンジンではなしえない計数誤差の算出と、温度ドリフト等によるピーク位置のズレをもプログラムが的確に判断し解析を実施します。
スクリーニング基準において、ROIを設定する場合温度ドリフトの影響を考慮しなければなりません。このためには正確なピーク探査技術が必要となります。このため多くの分析機器ではROIの範囲を大きく取ることになります。本プログラムではトータルガンマでの評価に加え、Code FUKUSIMAで得られたピーク位置、ピークエリアから的確なROIを自動で設定し評価することができます。


多重ピーク探査

 ピーク探査では平滑化2次微分フィルターを使った畳み込み積分が行われます。10種類のフィルターを使って得られた結果を比較検討して最適と思われる値を収集します。この方法により、相反する高い感度と優れた耐雑音性が得られ、関数適合の初期値として利用します。

最尤関数適合

 ピークにガウス関数を当て嵌め、ベースラインに指数減衰関数を当て嵌めます。このプログラムでは最小2乗法ではなく、最尤法による関数適合を採用していますので、ピーク面積とその計数誤差を算出する事が出来ます。(文科省 Ge マニュアル 183185頁参照)

 各チャネルの計値数は真の値の辺りにポアソン分布し、その分布幅は真の値の平方根になります。最小2乗法は、計数値の分布が真の値に無関係な正規分布すると考えるのと同じです。この違いの所為で計数誤差の算出が出来なくなり、食品の放射能分析に使用してはなりません。

http://www.crl.nitech.ac.jp/~ida/research/memo/MaximumLikelihood/maximum_likelihood.pdf

出典:「最尤推定法 Maximum-Likelihood Method」 名古屋工業大学セラミックス基盤工学研究センター 井田 隆

収束判定は繰り返し近似の際に

1.χ2乗の変化が 0.1% 以下になった
    
2.全ての適合パラメータの変化が 1% 以下になった。

です。但し近似回数が 200 に達すると打ち切ります。繰り返し近似が数十回程度で、概ね収束します。
 

スーパーフィッティング

 最尤関数適合を用いると Cs134Cs137などピークが重なり合っている場合でも正しいピーク面積とその計数誤差が各々独立に算出できます。このプログラムでは、ピーク分離が出来ない様な低計数値の場合でも適用出来る、"対象核種のピーク中心の間隔の比を固定するという拘束の下の、最尤法による複数ピークの同時関数適合”を行っています。
 仮に温度変化によってピークの位置が変わったたとしても、スペクトル中で各ピークの間隔の比は不変である事を利用しています。つまり、ピークの位置がずれた時でも、各ピークの間隔の比から目的のピークの位置が定まります。実際には  鉛の特性 X (80keV)I-131(364.48keV)Cs-134(569.29keV, 604.66keV, 795.47keV, 1400.42keV Sumpeak)Cs-137(661.64keV)K-40(1460.85) の8本のピークを解析の対象にしています。このうちの少なくとも何れか2本のピークが利用出来れば、他のピークについてもピーク面積と誤差を算出する事が出来るのです。勿論、全て利用出来れば互いの関係からより信頼出来る位置が定まります。

厚生労働省食品放射能スクリーニング基準

厚生労働省食品放射能スクリーニング基準に基づく合否判定は、最も安全側とされる全ガンマ計数値を用いる判定と、セシウム領域の計数値を用いる判定の両方を出力します。
試料を測定して得られるスペクトル、標準試料を測定して得られるスペクトル、測定器に何もセットしないで測定して得られるバックグラウンドスペクトル、の3つを使って放射能を計算します。
報告書を作成するにはこの3つを得て、それぞれを解析してからです。

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◆ 分析例

この分析例は社団法人 日本アイソトープ協会製Cs134+137の混合線源を3inφ×3in NaI(Tl)検出器で測定したデータを分析しています。

Cs134の605kev及びCs137の662kevはNaI(Tl)検出器では複合ピークになりますが、Code-Fukushimaはこの重なりを分離できていることに注目してください。

画面の灰色の網掛け部分は、厚生労働省食品放射能スクリーニング基準に基づくROI範囲を示しています。左側はI-131領域、右側はセシウム領域に設定されます。
ここで設定されるROIは固定ではなく、Code-Fukushimaによって求められたピーク位置とピーク範囲から的確に設定されます。
Code-Fukushimaによりピークの存在しないI-131領域にもROIが設定されていることに注目してください。
この分析例は実サンプルの測定データの分析です。

混合線源と同じようにCs134,Cs137が綺麗にフィッティングされています。

この例で注意すべき点はK40のフィッティングです。K40の含まれない混合線源と異なり、K40の領域に2つのピークが存在していることに注目してください。
これは試料中に含まれるK40とCs134のサムピークを示しています。

Code-FukushimaではK40の影響に対しても有効な結果をもたらします。


*これによりお気づきの通り、線源分析時にK40のピークのように見える高エネルギー側のピークはCs134のサムピークです。
この分析例はバックグラウンドスペクトルを分析した例になります。

これまでの例で気になられた方も多くいると思いますがスペクトルの左側にある小さな三角形のピークは遮蔽体の鉛が宇宙線などにより叩かれた際に放出する特性X線のピークです。
Code-FukushimaではこのX線ピークと自然界中に存在するK40の極ありふれたピークからピークが存在しない(つまりピーク探査できない)ヨウ素、セシウムの領域を把握し、分析することができます。

分析が終了すると詳細な分析結果を知ることができます。

解析結果の表は第2列から、一列ごとに一本のピークに関するデータが載っています。

2〜3行目はベースラインパラメータ(ベースラインは指数減衰関数で表しています)
6行目はピーク半値幅
8行目はピーク中心チャネル
9行目はピークの高さ
10行目は正味ピーク面積
11行目は正味ピーク面積の計数誤差です。
第1列は

1行目が Live time
2行目が総計数
4行目がエネルギー較正式定数項
5行目が同1次係数
7行目が沃素領域計数
8行目がセシウム領域計数
10行目が最尤関数適合の際の自由度
11行目が最尤関数適合結果のχ2乗



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◆ 帳票例


帳票を出力前に画面で確認することができます。
新しい解析が終了したら”解析結果を保存”すれば、全ての解析結果のデータを何時でも確認、プリント出力することができます。

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◆ 台帳

放射能分析も化学分析など他の分析同様、試料と測定の履歴を管理する事はトレーサビリティを保つ上で重要です。プログラムでは測定した試料台帳(試料識別番号・試料の種類・採取地点・採取日・採取者・試料調整法・測定容器・測定供試量、試料データ入力担当者・分析仕様・登録年月日時分秒)、測定台帳(スペクトルファイル名・試料識別子・検出器名・Live Time・測定日時・バックグラウンドファイル名・測定担当者・解析日時・解析結果ファイル名)を台帳として管理する事ができます。
台帳のデータはcsvファイルとしてExcelなどで読み込む事ができます。


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◆ 分析仕様

分析仕様の詳細が見られます。分析仕様とは試料毎に分析対象核種、効率校正用データ等を記載したデータベースです。


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◆ システム要求


本プログラムは以下の環境で動作します。本プログラム1ライセンスにつき1台のPCにのみインストールすることができます。プログラムは使用するPCのmacアドレスで管理されるので、お客様保有のPCへ
インストールする場合にはご注文時にmacアドレスをご連絡ください。

OS Microsoft社 Windows7(32bits)
CPU Intel core i5以上
メモリ 2GB以上
ディスク容量 32GB以上
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Innovation!!
CODE FUKUSHIMA
Dula Analysis Engine
NaI(Tl)検出器による放射能分析の新しい歴史が始まります

第49回 アイソトープ・放射線研究発表会でCODE-FUKUSHIMAの性能が証明されました。

社団法人日本アイソトープ協会技術部研究開発課山田祟裕様ご発表資料。

発表資料

本プログラムは原子力発電所事故による食品汚染検査に対応することを主目的として開発されました。NaI(Tl)スペクトル用に以前から用いられてきた一般的なアルゴリズムではなく、文部科学省放射能測定法シリーズ No.7 ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリーに記載された分析アルゴリズムを採用し、NaI(Tl)検出器が持つ多くの特性を考慮した NaI(Tl)検出器用の革新的なガンマ線分析プログラムです。

本プログラムは今後長期間続く放射能監視の一助となることを使命として開発されています。